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テニス肘、外側上顆炎

​ぶり返すテニス肘は、肩甲骨の”ねじれ”のせいかもしれません

臨床的特徴

 50代の女性が右左両方の前腕の痛みを訴えている。痛みは10日前から始まり、段々と強くなってきている。重い物を持ったり、握ったりする動作で増悪する。主婦であり、家事で手を使うことは多いのだが、3年前から裁縫の仕事をするようになった。

また、右手中指を曲げると引っかかったように戻らなくなる症状も随伴して表われるようになった。youtubeで、腱鞘炎のマッサージなどを見つけては自己流で試しているのだがあまり改善されない。

 

介入と結果

 クライアントは胸椎後弯(背中の丸さ)と腰椎前弯(腰の反り)の強い姿勢をしている。脊柱全体、とくに胸椎の柔軟性が低下して感じられる。肘の外側の筋肉に硬結(こり固まった部分)と強い圧痛が認められた。手首を反らせる筋肉に抵抗を加えることで前腕の痛みを再現することができる。外側上顆炎が疑われた。

 

 施術は胸椎を中心として脊柱骨盤に対して行われた。痛みの発生源になっている肘の外側に付着している筋膜に対しても行われた。1回目の施術の後、左前腕の痛みと右手指の引っかかり感は消失したが、右前腕の痛みはまだ残っている。ヤカンを持つときなどの動作で痛かったのである。2回目の施術の後、右前腕の痛みは軽減し、日常生活ではほとんど気にならないくらいになった。

 

​考察

 外側上顆炎はテニス肘と呼ばれることもある使い過ぎ症候群です。重い物を持つとき、包丁を握りしめて固いものを切るときなどの日常生活の動作は、手首を反らせる筋肉が強く収縮することで可能にしています。外側上顆炎は手首を反らせる筋肉である手根伸筋群が付着している外側上顆(肘の外側の骨の出っ張り)とそこに付着する腱との摩擦が反復することで起こると考えられています。

ノートと鉛筆
テニス肘

『治りの悪いテニス肘は肩甲骨のねじれが原因です』

 腕の凝り固まった筋肉をほぐして血流を改善させることは、損傷した筋線維の再生を促す効果が期待できますが、上肢のアライメント(配列、この場合は体幹に対する上肢の位置)が崩れているときには注意してみることが大切です。上肢のアライメントが崩れることで、腕の筋肉が付着している部分にねじれが生じ、手首を使うたびに筋肉に不自然な張力が発生してしまうからです。筋腱の損傷を繰り返している可能性があるからです。

 

 上肢アライメントの崩れは、脊柱アライメントの崩れ、つまり姿勢が乱れることで起こります。肩甲骨は鎖骨と頚の筋肉でぶら下がっていて、平らな面は胸郭の表面をすべるようにして可動しています。このことからも、背中が丸くなると肩が上がったり、肩を巻き込んだ姿勢になることは容易に想像できると思います。悪い姿勢が癖になれば、胸椎は柔軟性を失ってしまいます。腕の筋肉は微小断裂を繰り返し、症状は慢性化してしまうことも考えられます。

 

ここでも、やはり「姿勢」です。

 繰り返すテニス肘は、腕の筋肉ばかりでなく、上肢のアライメントに対しての施術を行うことが肝心だと思います。

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