top of page

​胸郭出口症候群

Thoracic Outlet Syndrome

上肢の痛み・しびれは、頚筋や胸筋、肋骨と鎖骨が神経を圧迫することでも起こります。

症例:頚椎からの腕の痛み・手のしびれ、胸郭出口症候群を伴う

​症例1

【臨床的特徴】

 40代男性が右肩甲骨から腕の痛み、手のしびれを訴えている。肩甲骨の痛みは5か月前より始まった。次第に手のしびれも感じるようになった。その後、上腕・前腕にも強い痛みが生じるようになった。整形外科では頚椎から来ているといわれた。姿勢が原因とも言われた。

 一日を通してデスクワークであり、終業に近づくにつれ肩甲骨と腕の痛み手指のしびれは強くなる。車の運転をしていても痛みは強くなる。 

 

【介入と結果】

 クライアントは、がっちりとした体格をしている。筋肉質である。胸椎柔軟性の低下と肩甲帯の筋群、胸筋の過緊張が顕著である。下部頚椎への軽い押圧で腕に強い痛みが走る。第7.第8頚神経に関係する深部腱反射の減弱が確認できた。胸郭出口症候群の検査では、斜角筋間隙と小胸筋下間隙のストレス検査で上肢の痛みが誘発された。

 

 施術は頚椎、胸椎、そして仙腸関節に対して行われた。2回の施術で、肩甲骨から腕の痛みは軽減し、手のしびれは気にならない程度になった。3回目の施術後は腕の痛みはほとんど感じなくなった。初回の痛みを10とすれば、現在は1~2である。

 

【考察】

 この症例における上肢の痛み・しびれは、頚椎での神経根の圧迫が考えられますが、胸郭出口症候群の併発も疑われます。胸郭出口症候群は、肩甲帯の領域における上肢の神経血管系の圧迫により起こるさまざまな症候群の総称です。

 胸郭出口と呼ばれる領域では、①頚部の筋肉である斜角筋の間隙、②肋骨と鎖骨の間隙、③小胸筋下での空間で上肢に向かう神経線維が圧迫されることがあります。

 神経組織は圧迫などによる虚血に対して脆弱なため、一か所で圧迫されるよりも複数個所で圧迫された方がより神経の伝道は障害されやすいです。

 胸郭出口症候群は“姿勢”の問題と深い関係があります。デスクワークなどで、背中を丸めて頭部を前方に突き出し、顎の上がった力学的に好ましくない姿勢では、斜角筋や胸筋が過緊張を起こしやすく、また鎖骨と肋骨の間隙も狭くなるからです。

 

 上肢の神経痛で胸郭出口症候群の併発が疑われる場合は、部分と全体、すなわち頚椎のズレと姿勢全体の問題を修正するような脊柱骨盤を含めたケアが推奨されます。​関連ページ​肩こり、肩甲骨の痛み

豆知識:

 肋骨は胸椎にのみありますが、まれに頚椎にも形成されることがあります。これを頚肋といいます。第7頚椎で多いことが知られています。このレベルでの頚肋は腕神経叢や鎖骨下動脈を部分的に圧迫し得るため、胸郭出口症候群の原因の一つとも考えられています。

クライアントの声:

​30代男性

「あやしいと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、専門知識豊富な先生がやさしく丁寧にして下さいます。」

TOSアンカー 1

症例2

【臨床的特徴】

 50代男性、後頚部から胸背部にかけて痛みを訴えている。右鎖骨から腕が非常に重く感じられ、腕に思うように力が入らず上げられないこともあった。ふとした動作で鎖骨から腕にかけて強い痛みが走り、手指の血流がサーッと引くような感覚が生じることもある。仕事では工具を使う手作業をしており、重い物を運ぶこともしている。最近は仕事が忙しく休む暇がなかった。

 

【介入と結果】

 胸椎の柔軟性が低下しており、肩が前方に入ったような姿勢をしている。頚椎はややストレートに見える。胸筋の肥大と過度の筋緊張がみられ、軽い押圧でも強い痛みを生じる。

施術は、頚椎、胸椎、および骨盤帯に対して行われた。施術後、腕の重量感は軽減し、胸筋の痛みは消失した。

 

【考察】

 心臓から上肢に向かう動脈は神経線維と並行して走っています。神経線維と同様に「斜角筋間隙」「肋骨と鎖骨の間隙」「小胸筋下の空間」といった狭い空間を通り抜けています。後頚部や前胸部の筋肉を酷使することで異常な筋収縮が起こります。それにより胸郭が歪んで「斜角筋間隙」「肋骨と鎖骨の間隙」「小胸筋下の空間」が狭められます。この部分で動脈が圧迫されると手指の血行不良が生じることがあります。筋肉の異常な収縮は背骨の歪みの原因になりますが、背骨の歪みも筋肉の異常収縮の原因となります。脊柱と筋機能の間には密接な関係があります。予後を良好なものにするためにも、上肢帯だけでなく、骨盤帯を含めた施術が必要だと考えています。

TOS.jpg
bottom of page