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『神と銃のアメリカ極右テロリズム』を読んで思うこと

  • 執筆者の写真: ベルワンカイロ
    ベルワンカイロ
  • 6月19日
  • 読了時間: 2分

GOD, GUNS, AND SEDITION Far-Right Terrorism in America

著者:ブルース・ホフマン 著者:ジェイコブ・ウェア 訳者:田口美和 

みすず書房2024.10


『アメリカ極右の危険性』──「ターナー日記」が現実になった世界とは

アメリカの極右運動をめぐる議論で、必ずと言っていいほど語られる小説があります。それが、ウィリアム・ルーサー・ピアースが1978年に架空の筆名で発表した小説『ターナー日記(The Turner Diaries)』です。


この本は一見、荒唐無稽なフィクションのように見えます。物語は、白人至上主義者の主人公が「反ユダヤ・反黒人・反政府」の武装革命を起こし、アメリカを倒すという衝撃的な筋書きです。しかし、実はこの本は、現実のテロ行為や暴力の「マニュアル」として機能してきた恐ろしい背景を持っていることを著者は指摘しています。


なぜ小説が「現実の暴力」を導いたのか?

1995年、オクラホマシティ連邦ビル爆破事件で168人が命を落としました。実行犯のティモシー・マクベイは、『ターナー日記』を何度も読み返していたとされます。彼の行動は、小説内の「連邦ビル爆破」に酷似していました。

そして2021年、トランプ支持者らが連邦議会に突入した「議会襲撃事件」もまた、白人ナショナリズムや陰謀論に根ざしたものです。ここにも『ターナー日記』の影がちらついているとの見方も上がっています。


小説が「極右のバイブル」になる危うさ

この本はAmazonなどでは販売禁止となっており、日本ではほとんど知られていません。ですが、アメリカでは極右運動や白人至上主義グループの間で密かに読み継がれてきました。それは、単なる物語を超えて「思想の種」を蒔いてきた証拠です。


『ターナー日記』の中では、「自由と銃と白人のために闘う」ことが正義として描かれます。そのイメージが、リアルな社会不安や人種差別、陰謀論と結びついたとき、どれほど破壊的な力になるか──それは既に現実で示されてしまったのです。


日本に住む私たちにとっての意味

日本にいると、アメリカの極右問題は遠い世界の出来事のように思えるかもしれません。でも、ネット空間では国境がなく、差別や暴力的言説はあっという間に拡散します。「敵をつくって自分の正義を守る」という発想は、私たちの社会にも無縁ではないと感じます。

だからこそ、本書『神と銃のアメリカ極右テロリズム』を通してアメリカ極右の危険性を直視する必要があると感じます。フィクションが現実に追いつくどころか、現実がフィクションをなぞってしまう──とても恐ろしいことではないでしょうか。


画像出典:      みすず書房公式サイト
画像出典:      みすず書房公式サイト

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