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分かれ道 -ユダヤ性とシオニズム批判-

  • 執筆者の写真: ベルワンカイロ
    ベルワンカイロ
  • 5月28日
  • 読了時間: 2分

更新日:5月29日

ジュディス・バトラー 著, 大橋洋一、岸まどか 訳 青土社2019.10


ユダヤ人は、かつて被害者であったのに、なぜ加害者となるのか?


ユダヤ人国家・イスラエルの建国は、ナチスによるホロコースト(ショアー)の後に実現しましたが、その思想的基盤はすでに19世紀末からのシオニズム運動にあります。シオニズムは、ヨーロッパにおける激しい反ユダヤ主義への防衛的な応答として生まれ、「ユダヤ人が自らの国家を持つことで安全を確保しよう」とする運動でした。


たしかに、ホロコーストはこの運動の正当性を強め、イスラエル建国(1948年)を大きく後押しする出来事でした。しかし、国家を築き維持・拡大していく過程で、シオニズムは排他的・軍事的な側面を強め、他の民族、とりわけパレスチナ人に対して抑圧的な態度を取るようになっていきました。


イスラエルを批判することが「反ユダヤ主義だ」と糾弾される風潮のある中、ジュディス・バトラーは、自らの民族がかつて被害者だったという記憶が、現在の加害行為を正当化する「道徳的な盾」として機能してしまっていることを鋭く批判します。バトラーはこうした思考停止に対して、「ユダヤ的倫理とは、他者の苦しみに最も敏感であることだ」と強調します。


本書では、苦しみの記憶を「連帯」へと変えていくには、どんな語り直しが必要か?ユダヤ思想の系譜や哲学的思索を通じて問い続けます。

画像出典:青土社公式ウェブサイト
画像出典:青土社公式ウェブサイト


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