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家父長制の起源 男たちはいかにして支配者になったのか

  • 執筆者の写真: ベルワンカイロ
    ベルワンカイロ
  • 2月3日
  • 読了時間: 3分

更新日:4 日前

家父長制の起源 男たちはいかにして支配者になったのか アンジェラ・サイニー (著), 道本 美穂 (翻訳) 2024年10月 集英社


「家父長制は自然なものではなく、歴史や文化、権力構造によって作られ、維持されてきた制度である。」――著者は、霊長類学や考古学、歴史、人類学の多角的な視点からその起源を探り、各地の「例外」に光を当てながら、家父長制が決して普遍的でも不可避でもないことを明らかにしている。


 男性社会が世界中に広く普及しているのは確かですが、その形態や発展の仕方は地域ごとに異なり、一つの単純な原因で説明できるものではありません。歴史は多くの場合、勝者や支配者の視点から語られています。そのため、女性や少数派、支配される側の視点は軽視されがちです。しかし、人間の生き方には多様性があり、そうした見落とされがちな部分にこそ、私たちが知るべき「本当の姿」があると著者は指摘しています。


 本書のテーマはスケールが大きく、身近に感じにくいこともあるかもしれません。そこで、「ご当地家父長制」や「自家製家父長制」という言葉に置き換えて考えてみるのはどうでしょうか。地域や文化によって家父長制の形態が異なるという視点を持つことで、「男女の不平等は普遍的なものだ」という思い込みを崩しやすくなります。つまり、家父長制はすべての男性が一斉に権力を行使する単純な構造ではなく、社会の歴史や文化、経済、宗教的な背景によってさまざまな形に変化してきたものだと理解できるのです。


家父長制の主な特徴

 家父長制は地域によって異なる形をとりますが、共通する要素があることが分かります。


  • 権力の集中:家族や社会の主要な意思決定権が男性に与えられる。

  • 資源の支配:土地や財産、労働力(女性の家事労働など)を男性が管理し、継承する。

  • 規範の強化:宗教や伝統、法律を通じて「男は外で働き、女は家庭を守る」という役割分担が固定化される。

  • 暴力の正当化:女性を従属させるための暴力(身体的・精神的・経済的な抑圧)が社会的に許容される。


家父長制の本質とは

 家父長制の本質は、「男性 vs 女性」の対立ではなく、「権力を持つ者 vs そうでない者」という構造の問題であると考えられます。すべての男性が平等に支配的な立場にいるわけではなく、むしろ「一部の男性」だけが権力を持つ構造になっています。

例えば、資産や地位を持つ男性は「支配する側」に回りますが、貧しい男性、障害を持つ男性、マイノリティの男性は「支配される側」になることもあります。このように、家父長制は男性全体に利益をもたらすものではなく、一部の権力者にとって都合の良い仕組みであることが分かります。


男性にこそ読んでほしい本

 家父長制の本質を理解することは、男性自身が「無自覚の加害者」になることを防ぐ手がかりになります。

加害者にならないために...

 多くの男性は、意識的に「女性を抑圧しよう」と思っているわけではありません。しかし、家父長制のルールに無自覚に従うことで、結果的に加害者になってしまうことがあります。

例えば:

  • 「女性は家事・育児が得意だろう」 という思い込み → パートナーに家事を押し付ける。

  • 「男は決断力がある」 という思い込み → 仕事や家庭で女性の意見を軽視する。

  • 「男らしさ」を誇示する行動 → 職場や学校でのマウンティング、無意識のハラスメント。

 こうした行動は、本人に悪意がなくても、女性にとっては抑圧や不平等を感じる原因になります。家父長制が「自然なものではなく、作られたもの」と分かれば、「男だから」「女だから」という固定観念を疑うことができます。家父長制の本質を知ることは、より良い人間関係を築くことにつながるはずです。



画像出典:          集英社公式サイト
画像出典:          集英社公式サイト

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