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抵抗する動物たち:グローバル資本主義時代の種を超えた連帯

  • 執筆者の写真: ベルワンカイロ
    ベルワンカイロ
  • 4月15日
  • 読了時間: 2分

更新日:4 日前

抵抗する動物たち:グローバル資本主義時代の種を超えた連帯

サラット コリング (著), 井上 太一 (翻訳) 青土社 2023/2


資本主義の搾取にさらされながらも、動物たちは沈黙してはいない。本書『抵抗する動物たち』は、動物たちの「意志ある行動=抵抗」に光を当て、彼らを単なる被害者ではなく、主体的な存在として描き出す。動物解放の哲学を軸に、世界に広がるさまざまな抑圧がどう絡み合っているのかを見つめ直し、動物・人間・地球すべてを視野に入れた「総合的な解放」をめざす研究の書です。


動物が意思を持った存在であることを知ったとき、自分の動物への接し方が、そのまま人間関係をも映し出していることを認めないわけにはいかなくなります。

たとえば、ペットに対して「エサをやる」「撫でてやる」「褒めてやる」「散歩をしてやる」など、愛情のつもりで行っていた行為のなかにも、「してあげている」というパターナリズム(父権的な支配)が潜んでいることが分かります(これは、傲慢で抑圧的な態度であり、心の成長を妨げるものです)。

そしてそれは怖いことに、動物に対してだけでなく他者全体に向けられるようにパターン化されているはずなのです。


動物にも意思があり、感情があり、選ぶ力がある――そう認めることは、「生きている他者を、一人の“誰か”として尊重する」ことにつながります。つまり、「かわいがる」のではなく「関係を築く」、「してあげる」のではなく「共にある」ことを目指す姿勢です。

近年では、フェミニズムやケア倫理の分野でも、「ケアの関係性は、人間と動物を分けずに捉えるべきだ」という主張が広がっているようです...。


「生き物を大切にしましょう」ということは、誰もが知っている当たり前のことです。 本書の著者は、その当たり前を超えて、動物の「抵抗」という現象を社会的・政治的な文脈でとらえ、動物たちを正義の闘争における当事者として捉え直そうと試みています。そんな日本では馴染みのないテーマを、日本語話者の琴線に触れるような言葉で訳し出した訳者の手腕は見事という他ありません。


画像出典:青土社   公式サイト
画像出典:青土社   公式サイト



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