荷を引く獣たち: 動物の解放と障害者の解放
- ベルワンカイロ
- 3月11日
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更新日:5 日前
荷を引く獣たち: 動物の解放と障害者の解放スナウラ・テイラー (著), 今津 有梨 (翻訳)洛北出版2020年
著者のスナウラ・テイラーは、本書で「障害者の権利運動」と「動物権運動」の交差性を明らかにし、障害者と動物の扱われ方には共通の抑圧構造が存在すると論じています。
彼女は幼いころから、屠殺場へ送られる鶏の詰まったトラックを目の当たりにして恐怖を感じていました。月日が経つにつれて疑問が具体化していきます。
どうやって動物はモノ(object)になるのか?どうやってわたしたちは、このモノ化 (objectification)を正常なことだと考えるよう教え込まれるのか?動物を〔モノとは〕異なった仕方で見るようになるには、障害について考えることが、どんなふうに助けになるのか?
この始まりの感情が導きとなって、少しずつ、動物の問題は他の社会正義の問題と深く関係しており、不可分ですらあるということを理解するようになった。ここには障がい者の問題も含まれる。障害化された身体(disabled body)は、動物を利用した産業のいたるところに存在していることに気づかずにいられない。そして、動物の身体はこんにちのアメリカにおける障害を持った心身の抑圧のされ方と、不可分の関係にあることに気づかずにはいられない。それならば、もし動物と障害の抑圧がもつれあっているならば、解放への道のりもまた結びついているのではないか、そう考えるようになった。
以上はプロローグからの抜粋ですが、ここからも分かるように、本書の内容は非常に深いです。ヴィーガニズム veganismや良心的雑食者 conscientious omnivore、交差性 intersectionalityなど、興味を引かれるトピックが多く、なかでもピーター・シンガーとの対話は必読です。
たとえ自分が健常者だと思っていても、人は誰しも「生老病死」から逃れることはできなくて、いつかは誰かの手を借りる時が来ます。死んだ後の自分の遺体の始末ですら、自分ではできないのですから。シンガーの質問に即答できない著者の態度は、そのまま私自身に突き付けられた問いのように感じます。
専門用語が多くて、読んでいて正直キツかったですが、読み終えた後は「この本に出会えてよかった」と心から思いました。もっと評価されてもよい良書だと思います。
